「ひまわり」や「星月夜」といった傑作で知られ、極貧のなか、1890年7月29日、パリ郊外オーヴェル・シュル・オワーズで拳銃自殺したとされるオランダの伝説的な画家、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(享年37歳)の死因について、不慮の事故による“他殺説”が浮上し、欧米で物議を醸(かも)している。ゴッホの死因に関しては今も謎が多く、今回の新説を機に死因を巡る論争に火が付きそうだ。(SANKEI EXPRESS)
新説に言及しているのは英で17日に発売されたゴッホの伝記「ヴァン・ゴッホ:その人生」。約900ページにのぼる力作だ。著者は、イラン生まれの米美術史家スティーブン・ネイファー氏(59)と、脳腫瘍と闘いながら活動する米作家グレゴリー・ホワイト・スミス氏(60)の2人だが、このコンビは91年、米有名画家ジャクソン・ポロック(1912-56年)の伝記でピュリツァー賞を受賞するなど、緻密な取材で知られている。
英BBCやAP通信など欧米メディアが17日までに伝えたところによると、2人は今回のゴッホの伝記の執筆に際しても、新たに入手した膨大な数のゴッホの手紙を20人以上の翻訳者や研究者の助けを借り、10年間にわたって分析したという。
その結果導き出した新説によると、ゴッホは10代の少年2人とカウボーイごっこをしていたが、その際、少年のひとりが持っていた整備不良の銃が暴発。ゴッホは銃弾を腹部に受けて重傷を負ったが、2人をかばうため自殺説をあえて否定せず、2日後にそのまま命を落とした。3人は大酒を飲んで酔っぱらっていたという。
ゴッホの死については、鬱病に悩んだ末、拳銃で自らの胸を撃ち、その2日後に亡くなったのが通説とされている。しかし著者のひとり、ネイファー氏は英BBCに対し「不慮の殺人の方が(自殺より)はるかに可能性が高い」と断言。「少年2人のうちの1人がゴッホを殺すために銃を携帯していたとはほとんど考えられない」と付け加えた。
この新説に対し、オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館のレオ・ヤンセン学芸員は17日「ドラマチックで興味をそそるが、自殺説を捨て去るのは時期尚早」などとする声明を発表した。
ゴッホの手紙の編集にも携わったヤンセン学芸員は、AP通信に「素晴らしい著作だと思うが、(自殺説を覆すほど)十分な証拠だとは考えられないので、この新説には同意しかねる」と述べ、真っ向から対立する姿勢を見せた。
自殺といわれながら肝心の拳銃が発見されていないなど謎が多いゴッホの死因。今回の新説は、生前には全く評価されなかったのに、死後、作品の取引価格が最も高額な画家のひとりとなるなど、不遇で特異な彼の生涯に新たな謎を付け加えたと見ることもできる。
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